前回 訪問記① 天橋立 の続き。
天橋立から北東方向に車で小一時間程走ると伊根町があります。
そこにある舟屋を見学してきました。
「舟屋」とは文字通り、舟のおうち、倉庫+αです。
今回はその「舟屋」の作り出す町並みについてのお話しです。
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湾を巡り、海上からの舟屋を見学するツアーもあるようですが、
時期が悪かったのか、湾の縁を徒歩で巡る見学となりました。
(約5kmの湾に沿ったコンパクトな町並みなので徒歩で回ることができました。)
「舟屋」の1階は舟の収納庫、2階は二次的な居室になっています。
というのも、舟屋の反対側(街道を挟んで山側)には母屋が建ち並んでいます。
海から帰ってくれば、街道を介して母屋へ出入りするのだそう。
歩いていると、舟屋が解体されたのか、基礎の状態が確認できました。
海に向かってスロープになっていて、
ここに舟を据えて出し入れする様子が分かります。
さて、私が今回気になったのは町の顔を作り出す屋根の形状です。
よく目にする切妻屋根には
三角形が見える面から出入りする ①妻入り と
それに直交する面から出入りする ②平入り の2種類あります。
(三角形が見える面を「妻側」というのに対し、それと直交する方向は「平側」といいます)
上の写真の右側が海側なので道を挟んで右手が舟屋、左手が母屋。
ここで先の 妻/平入り を見てみると…
舟屋は ①妻入り 一方、母屋は ②平入り ですね。
(一部例外もありますが)
「どうして 両方とも 妻入りか平入りで統一されていないのだろう…?」
建物の形状はその土地の形状や、風土、気候により、
昔ながらに先人の知恵が詰まっていることから形成されている歴史があります。
これは何か理由があるに違いない…と思い、色々と考えを巡らします。
ここで少し脱線。
私の地元の奈良の町並みを見てみると…
奈良では昔、建物の間口(正面の幅)によって課税されていたため、
道に対して奥行きのある“鰻の寝床”の建物が軒を連ねている様子が分かります。
このような細長い建物に対して ①妻入り にしようとすると、雨の流れが問題になります。
限られた土地の中で少しでも建物を広く使用するために土地いっぱいに建物を建てたいので、
屋根に落ちた雨をお隣との境界に流すのではなく、道路側に流すことになります。
そうなると必然的に ②の平入り の町並みができるわけですが……
本題の伊根の町並みの謎に戻りたいところですが、
続きはまた次回に。
(つづく)
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仕立建築舎 平賀
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