「あとは材と対話あるのみ!」
去年の秋ごろから作りたいと構想を練っていた
ブックスタンドを昨年末にようやく実現することができました。
上の言葉は、その時に指導してくれた前事務所の先輩Oさんの言葉です。
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【ブックスタンド 仕立1号】
・寸法:幅320弱×高さ210㎜
・樹種:本体 山桜、背板 ニヤトウ
・角度:4パターン調整可
・制作:1日
(小さい頃からのお気に入りの絵本『しずくとりんご』を添えて)
ものを作ろうとする時、考えることは沢山あります。
・誰が
・何のために
・どこで…使うのか?
・素材
・サイズ
・仕上げ…
オリジナルのブックスタンドを作りたいと思いたち、
角度などはスチレンボードで実物大でつくっては図面に反映し、の繰り返し。
(スチレンボードは模型材料の一つで、密度の高い板状の発泡スチロールを両面紙が貼ってあるもので、建築模型には欠かせないものの一つです。よく本屋さんなどのポップにも使われているので目にしたことがある方もいいらっしゃるのではないでしょうか。)
上に書いたような項目を一つ一つ検討し、“これだ!”と思い決定した図面(設計をする人間にとって意思伝達になるのが図面)を事前にOさんに見せていました。
意思伝達の図面を見せたことで、“あ~でもない、こ~でもない”という対話を想定していた私にとって意外なコメントでした。
一言「あとは材と対話あるのみ!」と。
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1週間後にOさんの工房へお邪魔し、
スチレンボードで作った模型も見てもらいながら最終確認するも、
やはり念押しの「あとは材!」と。
今回は色目の強い材を希望していたので
工房の中の端材を物色して見つけ出したのが「山桜」
山桜は素直な材であり、強度的にも粘りのある材のため、
家具でも重宝される材料です。
赤みを帯びて磨くと艶が増し変化も楽しませてくれる材です。
材料が決まったところで、機械の扱い方についてのレクチャー。
やはり何といっても安全第一!それに尽きます。
今回、作業に集中するあまり、途中の写真が少ないのが悔やまれますが、
大きな機械を扱ったり、黙々とやすりをかけたりと、
ただただ集中して作業を進めました。
小さな節や色目との取り合いを調整しながら木取りしたり、
作業性を優先して溝の寸法を決めたり、
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目の前にある材を見ながら、作る寸法を決めていく進め方。
図面を書いて、その通りに人に形にしてもらう、
という普段の進め方ではないプロセスを経て、
今回のオリジナルのブックスタンドができました。
この「山桜」と対話することで出来上がったと思います。
今回のコンセプトは
・シンプルで、あまり細かな細工をせずとも
・4段階の角度調整ができること
これらを満たすものができました。
↓↓↓使用例↓↓↓
あえて重みを出した本体の上下端に、長さの違う逆方向の折り曲げ部分をつくることで2段階の角度に対応します。横からみると[Z]の鏡文字のようなブックススタンドです。
今回は 片方には小さな折り返しも作り、文鎮などの押えがなくても本が引っかかり、閉じないようにしました。もう一方はある程度厚みのある書籍の利用も考慮して、文鎮を置くことを想定して小さな折り返しは無し。
本体の背面部分に浅いスリットを入れて、用意するのは長方形の背板。
背板は正方形でなく、長方形にすることでスリットに差し込む際の方向で2段階の角度が可能になるわけです。こでれ合計4角度の調整が可能なブックスタンドの完成です。
ある程度角度を調整したい、極力シンプルで部品の数も抑えたい・・・
そんなせめぎあいのプロセスでした。
「素材と対話すること」
これは工業製品でない事前素材を扱う以上、
不可欠でとても楽しい時間だと改めて感じました。
色々ご指導頂いたOさんありがとうございました。
これからも素材と対話する姿勢を忘れずに
モノを作っていきたいと再認識するブックスタンド作製記でした。
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仕立建築舎 平賀
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michi (日曜日, 28 5月 2017 13:03)
ブックスタンドの作成に、参加させてもらった者です。
材と之対話、とても楽しい時間でした。
素人には、木目の出方などの「見た目」からの切り口くらいしか、対話の話題が無かったのですが、
強度や、使い勝手など、対話の材は沢山あることを学ばせてもらえました。
またこんな機会があれば参加させてもらいたいと思っています。
オグマ工房さんも、大変お世話になりました、ありがとうございました。
仕立建築舎 (水曜日, 21 6月 2017 21:44)
michiさん
コメントありがとうございます。
材との対話を楽しんでもらう機会がもてて良かったです。
oguma工房さんにも感謝ですね。
また「対話」の機会を作りたいと考えています。
みの (水曜日, 08 8月 2018 18:09)
ありがとう。